身元保証人がいなくても特養に入所できる?保証人の役割と事前にできる5つの対策

介護

こんにちは、介護しよ.netのhiroです。

「身元保証人がいないと、特別養護老人ホームには入所できないのでしょうか?」

このような不安を抱えている人もいると思います。

結論からお伝えすると、身元保証人がいないことだけを理由に、特養への入所を拒否することは認められていません。

ただし、実際の入所手続きでは、緊急時の連絡、利用料の支払い、通院時の対応、亡くなった後の手続きなどを誰が担うのか確認されます。

そのため、身元保証人がいない場合でも入所は可能ですが、必要な支援体制を整えるまでに時間がかかることがあります。

身元保証人がいないことだけでは入所を拒否できない

厚生労働省が2025年7月30日に発出した「介護保険最新情報Vol.1409」では、介護保険施設に身元保証人を求める法律上の規定はなく、身元保証人がいないことは、サービスの提供を拒否する正当な理由には該当しないと示されています。

また、身元保証人がいないことだけを理由として入所を拒んだり、退所を求めたりしないよう、都道府県などに対して施設への適切な指導・監督を求めています。

一方、同資料には、介護施設への入所時に本人以外の署名を求めていた施設が95.9%だったという調査結果も掲載されています。

ただし、この数字は平成29年度に実施された調査の結果です。現在もまったく同じ割合とは限りませんが、多くの施設が本人以外の連絡先や支援者を必要としてきた実態が分かります。

したがって、制度上は身元保証人がいなくても入所できますが、施設側が心配する次のような問題について、代わりとなる対応方法を考える必要があります。

  • 緊急時には誰へ連絡するのか
  • 利用料はどのように支払うのか
  • 通院や入院時には誰が対応するのか
  • 日用品や衣類を誰が用意するのか
  • 亡くなった後の手続きを誰が行うのか

これらの役割が整理されていないと、入所に向けた調整が長引くことがあります。

「身寄りのない高齢者」とはどのような人?

「身寄りがない」と聞くと、親族が一人もいない人を想像するかもしれません。

しかし、介護現場では、親族がいても実際には支援を受けられないケースがあります。

厚生労働省の調査研究事業で作成された資料では、次のような人も「身寄りのない高齢者」として整理されています。

  1. 保証人や緊急連絡先となる親族などがいない人
  2. 親族などはいるものの、連絡がつきにくい人
  3. 連絡はつくものの、遠方などの理由で病院や施設に来られない人
  4. 親族などがいても、支援を期待できない、または対応を拒否されている人

つまり、戸籍上の親族がいるかどうかだけでなく、必要なときに実際の支援を受けられる人がいるかどうかが重要になります。

身寄りのない高齢者は今後さらに増える見通し

2020年時点の50歳時未婚率は、男性が28.3%、女性が17.8%でした。2000年と比べると、男性は約16ポイント、女性は約12ポイント上昇しています。

日本総合研究所の推計によると、子どもがいない高齢者は、2024年の459万人から、2050年には1,032万人に増えると見込まれています。

また、三親等以内の親族がいない高齢者も、2024年の286万人から、2050年には448万人へ増える見通しです。

これらは国の公式な将来推計そのものではなく、国勢調査や人口動態調査などを基に日本総合研究所が算出した推計値ですが、親族による支援だけでは対応できない人が増えていく可能性を示しています。

さらに、2026年6月25日には社会福祉法などの改正法が公布されました。

頼れる身寄りがいない人に対する日常生活支援、入院・入所手続き、死後事務などを行う事業が、第二種社会福祉事業として位置づけられることになっています。関連部分は公布後2年以内に施行される予定で、今後は地域での相談・支援体制の整備が進むと考えられます。

特養で身元保証人などに求められる役割

身元保証人や身元引受人に求められる役割は、施設や契約内容によって異なります。

そのため、「身元保証人になれば、次のすべてを行う義務がある」というわけではありません。入所前に契約書を確認し、どこまでの対応を求められるのか確認することが重要です。

主な役割は、大きく次の4つに整理できます。

1.日用品や衣類などの準備

特養に入所しても、本人が使用するものをすべて施設が無償で用意するわけではありません。

例えば、次のようなものは本人や家族などが用意することがあります。

  • ティッシュや歯ブラシなどの日用品
  • 化粧水や乳液などの個人用品
  • 季節に合った衣類や肌着
  • 靴や嗜好品

施設によっては、日用品を施設がまとめて購入し、後から本人へ請求する仕組みもあります。

どのようなものを本人側で用意する必要があるのか、入所前に確認しておきましょう。

2.緊急時や通院時の対応

転倒や体調の急変によって、救急搬送や通院が必要になることがあります。

施設職員がどこまで付き添えるのか、病院での手続きを誰が行うのかは、施設の方針や契約内容によって異なります。

身元保証人や家族がいない場合は、施設の相談員、ケアマネジャー、自治体などと相談し、あらかじめ対応方法を決めておくことが大切です。

なお、身元保証人になっただけで、手術や延命治療などの医療行為を本人に代わって決定できるわけではありません。

医療に関する意思決定は本人が基本です。本人の意思を確認できない場合は、過去の本人の意向や価値観を踏まえ、医療・ケアチームと関係者が話し合いながら方針を検討します。

3.利用料の支払いに関する対応

特養では、介護サービス費の自己負担分に加え、食費や居住費、日用品費などが毎月発生します。

施設によっては、本人が利用料を支払えなくなった場合に備えて、連帯保証人を求めることがあります。

ただし、次の役割は分けて考える必要があります。

  • 本人の財産から利用料を支払う「支払い代行」
  • 本人が支払えない場合に保証人自身が負担する「債務保証」

成年後見人は本人の財産から利用料を支払うことはできますが、原則として成年後見人自身が利用料を負担する保証人になるわけではありません。

契約する際は、保証する金額や期間、責任の範囲を必ず確認しましょう。

4.亡くなった後の手続き

特養では看取り介護を実施している施設もあり、その施設で最期を迎える場合があります。

亡くなった後には、次のような対応が必要です。

  • 遺体や遺品の引き取り
  • 葬儀や火葬の手配
  • 施設利用料などの精算
  • 居室の片付け
  • 行政や契約に関する手続き

これらは施設がすべて行えるとは限りません。

親族による対応が難しい場合は、本人の判断能力があるうちに、死後事務委任契約などを検討しておく方法があります。

身元保証人がいない場合に事前にできる5つの対策

1.親族や信頼できる人と役割を相談する

身元保証人は、配偶者や子どもに限られるとは限りません。

甥や姪、兄弟姉妹、友人などが緊急連絡先や支援者になれる場合もあります。

ただし、一人にすべてを任せる必要はありません。

例えば、緊急連絡は甥、日用品の購入は友人、財産管理は専門職というように、役割を分ける方法もあります。

相手に無理をさせないためにも、何をお願いしたいのか具体的に伝え、対応できる範囲を確認しましょう。

2.地域包括支援センターや市区町村へ相談する

地域包括支援センターは、身元保証を直接引き受ける機関とは限りません。

しかし、身元保証人がいない高齢者から相談を受け、本人の状況に応じて、市区町村、社会福祉協議会、成年後見制度、高齢者等終身サポート事業者などにつなぐ役割があります。

住んでいる地域によって利用できる制度や事業が異なるため、まずは地域包括支援センターや市区町村の高齢福祉担当窓口へ相談しましょう。

3.成年後見制度や日常生活自立支援事業を検討する

判断能力が低下し、契約や財産管理が難しくなった場合は、成年後見制度を利用できる可能性があります。

また、判断能力が十分ではないものの、本人が契約内容を理解できる場合には、社会福祉協議会の日常生活自立支援事業を利用できることがあります。

日常生活自立支援事業では、福祉サービスの利用手続き、日常的な金銭管理、重要書類の保管などの支援を受けられます。

ただし、日常生活自立支援事業が身元保証人になるわけではありません。

4.任意後見契約や死後事務委任契約を検討する

本人に判断能力があるうちであれば、将来に備えて任意後見契約を結ぶ方法があります。

また、亡くなった後の葬儀、納骨、行政手続き、遺品整理などについては、死後事務委任契約で依頼内容を決めておくことができます。

契約内容によって対応できる範囲が異なるため、弁護士、司法書士、行政書士などの専門職へ相談することが大切です。

5.高齢者等終身サポート事業者を利用する

民間事業者の中には、身元保証、日常生活支援、入院時の対応、死後事務などを提供しているところがあります。

ただし、費用の仕組みは事業者によって大きく異なり、入会金、月額料金、預託金、死後事務費用などが必要になる場合があります。

契約する際は、少なくとも次の点を確認しましょう。

  • 総額でいくらかかるのか
  • どこまでの支援が含まれているのか
  • 預けたお金をどのように管理するのか
  • 解約した場合に返金されるのか
  • 事業者が廃業した場合にどうなるのか
  • 苦情や相談を受け付ける窓口があるか

高額な契約を急いで結ばず、家族や地域包括支援センター、消費生活センター、法律専門職などに相談してから判断することが大切です。消費者庁も、高額な身元保証サービスを内容が分からないまま契約しないよう注意を呼びかけています。

まとめ

身元保証人がいない場合でも、特養に入所することは可能です。

介護保険施設に身元保証人を求める法律上の規定はなく、身元保証人がいないことだけを理由に入所を拒否することは認められていません。

ただし、実際の入所に当たっては、次のような役割を誰が担うのか確認する必要があります。

  • 緊急時の連絡や通院対応
  • 利用料や日用品費の支払い
  • 衣類や日用品の準備
  • 入院や退所時の手続き
  • 亡くなった後の対応

身元保証人を一人探すことだけが解決方法ではありません。

地域包括支援センター、市区町村、社会福祉協議会、成年後見制度、法律専門職、民間のサポート事業者などを組み合わせて、必要な支援体制を整えることが重要です。

いざ入所が必要になってから慌てないよう、元気なうちから「誰に、どの役割をお願いするのか」を考えておきましょう。

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