【初心者必見】食事介助のリスクやポイントついて解説

介護

こんにちは、hiroです。
今回のテーマは『食事介助』です。

食事介助と聞いて、思い浮かぶのは。スプーンなどで食べ物を相手の口元に持って行くことを想像すると思います。
まさにその通りです。
しかし、普段何気なく行っている食事介助は”リスクが高いこと”というのはご存じでしょうか?
口元に食べ物を運ぶだけなのに何がリスクなの?と思う方もいらっしゃるかもしれません。
今日は、普段何気なくやっている食事介助のリスクやポイントついて解説していきます。

❚ 食事介助のリスクやポイントついて解説

食事は衣食住のひとつであり生きていくことに不可欠な事、そして、高齢者に限らず美味しいものを食べると幸せな気持ちになりますよね。つまり、食事は生活を豊かにします。

通常、食事は朝、昼、夕と3食とる為、食事が満足いくものでないと、人生の楽しみが減ってしまいます。
そして、食事介助には大きなリスクが伴います。私が介護を始めたばかりの頃、先輩の方に言われ、今でも強く思っている言葉があります。

『排泄介助の失敗で死ぬことはないが、配薬と食事介助の失敗は命を落とす可能性がある』

当時はその言葉の重みはよく理解できませんでしたが、経験を積むにつれて意味を理解でき、重要性を強く感じます。

介護職は高齢者の方へ食事支援をします。そのため、健常者とは違い、食べ物が口の中に入ったまま飲み込めない方もいれば、麻痺などで口の片側が動かない方など様々です。そのような方でも安全に召し上がっていただく為に、ただ何となく食事介助を行うのではなく、どういったメカニズムで飲み込んでいるのか、そして、介助のポイントはどこにあるのか?などを解説していきます。

❚ 食事のメカニズム

食べ物を口に入れた後、体の中では,食物を食べる咀嚼(唾液と混ぜて呑み込みやすい形態(食塊)にすること)→飲み込むという流れで進んでいきます。以下がそれを段階的に分けたもので、このどこかで問題が生じると誤嚥などが起きやすくなります。

⑴先行期
⑵口腔準備期
⑶口腔送り込み期
⑷咽頭期
⑸食道

先行期・・・≪何を≫≪どのようなペースで食べるか≫を判断する時期を指します。食べ物を≪食べ物≫として認知する必要があり、手や食事(スプーンなど)を用いて口まで運ぶ動作も含みます。

口腔準備期・・・口腔に食物(水を飲む場合は水分)を取り込んでから、舌背の中央に配し、飲み込みの準備ができるまでの時期を指します。

口腔送り込み期・・・舌背中央の食物を咽頭へ送り込む時期を指します。

咽頭期・・・咽頭に運ばれてきた食塊を、嚥下反射によって食道まで移送する時期を指します。

食道期・・・食塊の後端が食道入り口部を通過すると、食塊が逆流しないように食道入り口部閉鎖されます。続いて食塊は食道の蠕動運動や重力によって下方に運ばれ、最終的に胃へと運ばれます。

嚥下メカニズム
≪引用文献≫ 山田好秋:よくわかる摂食・嚥下メカニズム,医歯薬出版,東京,2004:口絵.
≪参考文献≫ 1.Lepold NA,Kagel MC: Swalloing, ingestion and dysphagia:a reappraisal,Arch Phsy Med Rahabil 1983;64(8):371-373
2.馬場元毅:摂食・嚥下にかかわる脳の機能解剖、道健一、黒澤崇四監修、道脇幸博、稲川利光 編、摂食機能療法マニュアル、医歯薬出版、東京、2002:1-11.

❚ 食事介助のポイント

✔ 義歯は忘れずに装着する

→義歯を装着することで歯が欠けている部分を補い、嚥下がしっかりできることで誤嚥防止になります。

✔ 食事の姿勢や食事環境の確保する
テーブルで召し上がる場合・・テーブルの高さはおへその高さくらいに合わせ、足は床につける。       椅子は深く腰掛け、前かがみで、顎は引き気味になるような姿勢にします。もし、足が床につかない場合は足台などを使用する。

 ベットで食事をする場合・・ベットの高さを45度以上にあげます。そして、誤嚥(食べ物や水分、唾液が食道ではなく、気管に入ること)防止のため、首が少し前に曲がるようにするため、頭の後ろにクッションや枕を置くとよいです。先ほど、ベットの高さは45度以上と記載しましたが、角度は個人により異なることがあるため、状況に応じて調整しましょう。


介助者の位置・・利用者様の正面ではなく横に座るようにします。スプーンは横からではなく、正面から介助します。立った状態での介助は、利用者様の顎が上がり、後屈した状態になる為、誤嚥のリスクが高くなるため、座って食事介助をするのが基本です。

食事の環境も大切・・食事中にTVがついていたり、周りが騒がしいと気が散ってしまい、集中できず、食事が進まないことがあります。食事中は、テレビは消し、個別対応が可能であればしきり版などを使用するのも良いです。

✔ 食事中に確認すること

噛む力が低下していないかを確認する

  • 食事に時間がかかっていないか?
  • 咽こんでいないか?
  • 口腔ケア時に食物残渣がないか?
  • 丸飲みしていないか?                                  などを確認し、必要であればアセスメントを行い、食形態の変更を検討する。

覚醒状況を確認する

→食事中、眠ってしまわれることよくあります。その際はお声掛けし、覚醒を促し、起きないようであれば無理に介助をしない。覚醒状況が悪い状況での無理な介助は、食物を口に入れても飲み込まずに口腔内にため込んでしまい、誤嚥のリスクが高まります
  
飲み込みを確認してから次の一口を介助する

→まだ飲み込めていないのに、次の一口を行ってしまう場面もよくあります。ただ、中々飲み込まず、次の一口を介助することで、嚥下を促す場面もありますので状況もよりますが、基本は飲み込みを確認してから次の一口が安全です。飲み込めたかどうかが確認しづらい場合には、飲み込むときは『のどちんこ』が上下に動くため、確認がしやすいです。

水分を先に提供する

→味噌汁やスープなど水分を先に召し上がることで唾液の分泌が良くなって、食事が喉を通りやすくなります。

✔ 適切な食事形態と注意点について
  ⑴食事形態の種類

  • 普通食・・・加工することなく、通常の食事形態
  • 一口大食・・・利用者自身で食べ物を適切な大きさに切ることができない場合、あらかじめ一口の大きさにカットして提供する食事形態
  • 刻み食・・・食べ物を噛み切れない方や、固形物を飲み込むのが困難な方向けの食事形態
  • ミキサー食・・・食べ物を噛むことができない方向けの食事形態
  • ソフト食・・・比較的、新しい食事形態で、できるだけ通常食に近い形をしているが、実際はとても柔らかく加工しているので、目で見て食事を楽しむことができる。ただ、他の食事形態に比べるとコストがかかってしまう。

  ※注意点・・食べ物を口に入れた後、飲み込み、胃へと運ぶまでの一連の流れを『嚥下』といい、嚥下がうまくいかず、食事中に咽こみが多かったり、食後に口腔内に食べ物が残っていたりすると、『誤嚥』してしまう為、個々の状態のあった食事形態を設定し、提供していきます。ただ、安易に食事形態を落とすことは、食事の意欲低下やADLの低下を招くことに繋がる為、食事形態の選定には注意が必要です。

誤嚥しやすい食品一覧

  ⑵食事をまぜてしまうことはNG
   →化学変化で食べ物が誤嚥しやい状態になってしまう。おかゆの場合、唾液のついたスプーンを何度もつけると唾液の酵素がでんぷん質を消化することでおかゆがさらさらの状態になってしまいます。また、食事は目で楽しむ要素もあり、食事を混ぜてしまうと、美味しいとは感じられません。

❚ 最後に

過去に私自身が、窒息事故を目の前で目撃した経験があります。
私の隣で看護師が食事介助していて、ふと利用者様の顔を見た際、真っ青になっておりました。瞬く間にぐったりした状態になり、看護師は吸引器で吸引し、心臓マッサージをして、すぐに救急隊を呼びました。救急隊が到着後も心臓マッサージを継続して搬送されていきましたが、そのままお亡くなりになりました。
私自身、その後しばらくは、窒息している利用者様の様子が脳裏に焼き付けられ、食事介助が怖くなったことをよく覚えております。
食事介助をする時、今でも、その場面が思い出されます。
介護現場では、まだ介護経験が少ない方もいらっしゃいますが、とても早い段階で食事介助を命じられる場面があります。誰でも初めは未経験なので仕方ない事ではありますが、そういう場面を見ると心配になります。

『排泄介助の失敗で死ぬことはないが、配薬と食事介助の失敗は命を落とす可能性がある』

この言葉を意識しながら日々の業務に取り組んでいただきたく思います。

今回も、お読みいただきありがとうございました。


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