特養とショートステイの違いを徹底解説|現場20年が本質までわかりやすく説明

制度の解説

こんにちは、hiroです。

今回は、『特養とショートステイって何が違うの?』がテーマです。
私自身、特養に配属された初日は“ショートの利用者が誰かわからず、全員本入所だと思って動いていた”ほどで、混乱しやすいのは当然です。
同じように混乱される方は多いと感じますので、この記事で理解して行ってください。

特養とショートステイって何が違うの?

「なぜ混乱しやすいのか」を明文化

理由は簡単で、

・同じ建物に併設されている場合がある
・制服が同じ
・食堂や浴室を同じ場所で使う施設もある
・入退所の流れが外から見えにくい

上記が混乱を招く原因となっているのではないでしょうか?
また、ショートステイには3種類があり、
単独型
・本体施設に併設する併設型
・特養の空きベッドを利用する空床利用型

空床利用型は、特養入所者とショートステイの方が同じフロアで生活していることや同じ職員が対応している事も特徴です。

特別養護老人ホーム(特養)とは?

特別養護老人ホーム(特養)とは、介護老人福祉施設(かいごろうじんふくししせつ)の一種で、介護保険法に基づいて介護保険が適用される介護サービスを手掛ける高齢者施設である。対象者は要介護3から5の要介護認定を受けている高齢者である。 (ウィキペディアより引用)

 上記にもあるように、対象は要介護3以上が原則です。終の棲家とも呼ばれ、長期生活・看取り介護が可能で、施設で最後を迎える方も少なくないです。
 入所するには、直接施設で申し込みをして、入所の声がかかるまで待つ必要があります。待機期間は、人により数か月から年単位の方もいます。順番は先着順ではなく、施設で入所判定委員会で緊急度が高いと判断された方に順番にお声を掛ける形になります。緊急度が高いとは、要介護が高かったり、身寄りがなく一人で生活ができない、そして、老々介護であるなどが挙げられます。
 経済的な面では、よく有料老人ホームと比較されますが、費用面で大きな違いがあります。同じ介護を受けているのに、有料老人ホームと特養では、数十万円違うという事もあります。低所得者向けに費用の補助制度もある為、生活保護の方でも入所できるケースもあります。常に入所希望がある為、申し込みをして順番待ちをしている方は、数十人に上ります。

※低所得者向け特例サービス
・高額介護サービス費、特定入所者介護サービス費、社会福祉法人等による利用者負担の軽減制度など


 特養は、生活の場、所謂、「家」ですので、施設内で食事、入浴、排せつ、整容など生活に必要なケアを職員が提供します。
 生活面では、特養は集団生活になる為、基本的に毎日同じ生活習慣が繰り返されます。例えば、朝食は○○時、食事のあとは排泄の時間、などです。認知症が無い方や、杖歩行が出来たり、車いすを自操できる方は、居室と食堂を自由に行き来されたりと自由度は上がります。

特養でリハビリはできる?

 入所者の中には、専門的なリハビリや運動を希望されることがあります。しかし、特養は「家」ですので、リハビリ等は実施できないのが現状です。一方で、介護老人保健施設、通称、「老健」は在宅復帰を目指す為に専門的なリハビリを行う施設です。よくそこを勘違いされる方がいらっしゃいますが、明確に違いがあります。もし、少しでもリハビリを希望される場合は、訪問マッサージの方による簡単なリハビリで対応していただく方法もあります。

短期入所生活介護(ショートステイ)とは

ショートステイ(SS)は、正式名は短期入所生活介護と言います。
SSは居宅サービスの一種で、在宅の方を短期間受け入れて、必要な介護を提供します。

利用目的:在宅生活を支える、家族の休養(レスパイトケア)

・利用者の社会的孤立感の解消
・心身機能の維持
・レスパイトケア・・介護者の負担軽減

SSの利用目的の多くは、レスパイトケア、介護者の負担軽減を理由にすることが多いです。家族の冠婚葬祭出席の為や介護者が入院してしまったなど、突発的な理由でも利用できます。


生活面は、食事、入浴、排せつなど、特養とほぼ同じサービスを提供しますが、ショートステイの方は、要介護3からという制限がないため、比較的身の回りの事は自身でできる方が多いです。

利用方法:ケアマネを通じてケアプランに盛り込む必要がある

 先ほど、SSは居宅サービスとお伝えしたしましたが、SSを利用するにはケアマネージャにケアプランにSSの項目を入れていただく必要があります。そして、介護施設に空き状況を確認し、空きがあれば利用できる、と言う流れになります。そして利用できる期間に制限もあり、原則30日以内となっています。

費用や利用イメージ

費用は、特養料金とは基本単位数の違いと地域単価の違いはありますが、大きく違う事はありません。施設によって多少違いはあるとは思いますが、今私がいる介護施設では、おおむね似たような金額になります。

緊急時は家族対応が必要?


特養と違う点を追加で言うと、緊急時の対応が変わります。特養に入所になると、主治医が施設に往診するため、その方の状況を把握している医師が緊急時の指示ができます。そして、受診となった場合もは提携病院に施設職員が対応できますが、ショートステイは違います。緊急時は在宅の主治医に連絡し、指示を仰ぐ形になり、受診同行は家族が行く形になります。

緊急時の対応は、家族にとって大きな負担となるので、ショートステイ利用の方でも入所を希望される方が多くいらっしゃいます。

共通点と違いのまとめ


• 共通点:介護保険を使える、施設で介護サービスを受けられる
• 違い:緊急時の対応が違う
    施設にいる期間に限りがある
• 利用期間(長期 vs 短期)
• 手続き(申込み vs ケアマネのケアプランに盛り込む必要がある)
• 生活の位置づけ(生活の場 vs 在宅支援の補助)

よくある誤解・現場あるある

「SSを続ければ入所扱いになるのでは?」 → ロングショートの実情

 SSを利用していれば、自然と入所になるとは限りません。ただ、入所に切り替えはしやすいのは事実です。理由は施設側も利用者側としても、ある程度、状況がわかっていた方が、ケアをしやすいというのが理由です。SSは原則30日以内と決まっていますが、半年以上ショートステイを利用している方がいるので、混乱の原因の一つになっています。非推奨ではありますが、費用面で違いがあります。30日間は保険給付され、費用は1割負担で利用でき、31日目は実費、つまり10割負担をすることで、継続してショートステイが利用できるようになります。31日目でリセットされ、再び1日目になる為、1割負担となります。これは永続的にと言うわけには行かず、利用期間がケアプランの有効期間の半分を超えない事と決められています。

・30日を超えると自費10割負担になる
→31日目でリセットされ、31日目が1日目となり、再び1割負担になる
※ただし、ケアプランの有効期間の約半数を超えないことが条件

「特養待機中にSSでつなぐケース」

 特養入所は、かなりの人数の方が順番を待っています。すぐには入所できないが、家族の負担が大きく、家では見ることは難しい為、特養の空きが出るまでの間、SSを利用するという形もあります。

まとめ


特養=長期生活の場ショート=在宅支援の補助と言う位置づけになります。家族にとっては違いが分かりにくく、混乱しやすいが、目的が違う制度です。「今の状況に合うのはどちらか」を理解するのが大切です。
 最後に、在宅で介護をされる家族には一人一人それぞれの人生があります。家で親身に介護をすることは素晴らしいことですが、介護をすることで自分の人生を生きられない事はとっても悲しいと思ってしまいます。その為にSSという素晴らしい制度を積極的に利用してほしい。SS利用中は、我々専門職に任せて頂いて、家族それぞれの素晴らしい人生を過ごして欲しいと考えます。

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