ロボット時代に残る「人にしかできない介護」とは
こんにちは、hiroです。
介護ロボットやAIのニュースを見るたびに、
そのうちロボットに仕事を奪われるのかな…
そんなモヤモヤを抱えている介護職の方も、多いのではないでしょうか。
私自身も現場で働きながら、
「ロボットが当たり前にいる介護現場になったら、仕事はどう変わるんだろう?」
とよく考えます。
この記事では、その不安に対して、私なりの“仮説”を一つ出してみたいと思います。
ロボットが「標準」、ヒトの介護は「プレミアム」。
そんな未来が来るかもしれない。
そうなったとき、介護職の役割は本当に消えてしまうのか。
それとも、形を変えながら残っていくのか。
現場目線で、ゆっくり考えていきたいと思います。
「ロボットが標準、ヒトの介護はプレミアム」という未来像
私がイメージしている未来の介護現場は、ざっくり言うとこうです。
- 一般的で作業的なケアは、ロボットや各種装置が「標準」として行う
- 人と人との関わりを重視するケアは、今よりも高価な「プレミアムサービス」として、人間の介護職が担う
だいぶ思い切った未来図に聞こえるかもしれませんが、
身近なサービスに置き換えると、そこまで非現実的でもない気がしています。
洗車サービスに近い構図かもしれない

イメージしやすいのが「洗車サービス」です。
洗車をする時、多くの人はこの2つから選びます。
- コイン洗車機による洗車
- 人が行う手洗い洗車
コイン洗車(機械による洗車)
お金を入れれば、機械が自動で車を洗ってくれます。
昔より性能が上がり、傷もつきにくく、仕上がりもそこそこキレイ。
「普段使いならこれで十分」と感じる人も多いはずです。
ただ、どうしても細かい部分の洗い残しは出てしまいます。
手洗い洗車(人による洗車)
一方、手洗い洗車は人が行うので、細かいところまで丁寧に洗ってくれます。
「ここを重点的にお願いしたい」
「ワックスもかけてほしい」
といった要望にもある程度対応してくれます。
難点は、料金がコイン洗車の数倍になること。
それでも利用する人がいるのは、
- 「人にやってもらった満足感」
- 「任せた安心感」
があるからではないでしょうか。
介護も、将来はこれに近い構図になるかもしれません。
- 基本的な身体介護や見守りの多くは、ロボットやセンサー、各機器が担当する
- その一方で、「人に寄り添ってもらう時間」「じっくり話を聴いてもらう時間」は、人間の介護職が“プレミアムなサービス”として担い、今より高い対価がつく
こういった「二層構造の介護」は、十分にあり得る未来だと感じています。
そもそも、人型ロボットに介護はできるのか?
ここまで読むと、
「いやいや、人型ロボットに介護なんて無理でしょ」
「移乗や排泄介助なんて、力加減を間違えたら危ないじゃないか」
と感じる方も多いと思います。
私自身も、現時点(この記事を書いている時点)では、
一台の人型ロボットが、介護のすべてを担うのはほぼ不可能
だと考えています。
ただし、それはあくまで
「全部を一台の人型ロボットにやらせようとした場合」の話です。
実際に進んでいるのは、もっと“分解された形”の介護です。
ロボティクスの現状:全部を一体にやらせる必要はない
「ロボットが介護をする」と聞くと、多くの人がイメージするのは、
人型ロボットが、起こして、移乗して、オムツ交換して、入浴させて…
すべての介護行為を一体でこなす、SF映画に出てくるような姿
ではないでしょうか。
でも、実際に開発・導入が進んでいるのは、もっと役割の分かれたロボットや機器です。
例えば、
- 自動で体位変換してくれる機能を持つ介護ベッド
- 臥床状態から自動で端座位まで起こしてくれるベッド
- 排泄をセンサーで感知し、吸引・洗浄・乾燥まで行う自動排泄処理装置
- ベッド上の動きや心拍、呼吸を検知して夜間の状態を見守るセンサー
こうした機器は、すでに多くの施設で使われ始めています。
体位変換や移乗に特化したロボットアームのような機器も、研究・実用化が進んでいます。
さらに、
- 卵を握っても割らないくらい繊細な力加減ができるロボットハンド
- 人と一緒に体操をしたり、会話をしたりするコミュニケーションロボット
なども、一般家庭向けに販売され始めています。
ここで大事なのは、
「ロボットが介護をする」と言っても、
すべてを一体の人型ロボットにまとめる必要はない
ということです。
- ベッド:起こす・寝かせる・体位変換
- ロボットアーム:移乗介助
- 自動排泄器:排泄ケア
- コミュニケーションロボット:話し相手・見守り・レクリエーション
このように、役割ごとに分担するロボティクスを組み合わせていくことで、
結果として「介護のかなりの部分」をロボット側で支える未来は、十分に現実的だと思います。
ロボットが介護をするメリット
ロボットや機器が介護を担うようになると、どんなメリットがあるでしょうか。
① 人員不足の緩和
まず一つは、慢性的な人員不足を和らげられる可能性です。
介護業界はどこも「人が足りない」が合言葉のようになっています。
- 夜勤はきつい
- 身体的な負担が大きい
- 給与水準も決して高くはない
その中で、求人を出しても集まりにくい現実があります。
一方で、
- 夜間の巡視の一部をセンサーやカメラが担う
- 体位変換をベッド側で自動的に行う
こうした仕組みが広がれば、
「人がずっと張り付かなければならない仕事」
は確実に減っていきます。
排泄ケアも、センサーでタイミングを把握できるようになれば、
「気づいたら完全に漏れていた」という状況は、今より減らせるかもしれません。
② コストが抑えられる可能性
もう一つのメリットは、長い目で見ればコストを抑えられる可能性があることです。
導入当初、ロボットや機器はどうしても高価です。
それでも、普及が進み製品が増えて競争が起こってくれば、機器の価格は下がっていきます。
技術がこなれてくればメンテナンスのコストも下がり、
人件費も含めたトータルコストで見たときに、
「最初は高かったけど、結果的に割安だった」
という流れになるかもしれません。
③ モチベーションに左右されない
そしてもう一つ、ロボットには「感情の波」がありません。
人間には、
- 体調が優れない日
- 人間関係で気持ちが沈む日
があり、どうしてもパフォーマンスが上下します。
ロボットは、同じ手順を、同じ力加減で、
不平不満を言わずに繰り返すことができます。
特に、体位変換や見守りのような
「単純だがサボれない仕事」
との相性は良いと感じます。
ロボット介護のデメリット・課題
もちろん、ロボットには課題も多くあります。
課題① 導入コストの高さ
一番分かりやすいのは、導入コストの高さです。
ロボット本体の価格に加え、保守・点検・故障時の修理にも費用がかかります。
普及するまでは、特に中小の施設にとって大きな負担になりやすいでしょう。
課題② 責任の所在が不明確
トラブルが起きたときの責任の所在も問題です。
ロボットが原因で転倒や骨折が起きてしまった場合、
- メーカー
- 施設
- 操作していた職員
誰がどこまで責任を負うのか。
この線引きは、今後さらに議論が必要になるはずです。
課題③ 「心がこもったケア」は提供しにくい
そして何より難しいのが、心のケアや看取りの場面です。
- 人生の最期をどう過ごすか
- 家族とどんな言葉を交わすか
- 本人の不安や怒り、寂しさにどう寄り添うか
こういった領域を、ロボットが人間と同じレベルで担えるかと言われると、
現時点ではかなり厳しいと感じます。
看取りの場面を全面的にロボットに任せることに、
強い抵抗感を持つ家族や職員は、まだまだ多いでしょう。
ここは技術だけでは埋められない、「価値観」の問題も含んでいると思います。
外国人介護職ではダメなのか?
人手不足の対策として、
- 外国人介護人材の受け入れ
- 技能実習・特定技能などの制度
はすでに広がっています。
これはこれで、とても重要な選択肢の一つです。
ただ、現場で見ていると、いくつかの難しさもあります。
利用者の中には、外国人介護職に対して抵抗を感じる方も少なからずいます。
実際、私の施設でも外国人介護職が来た時、
- 「怖い」
- 「なんだか嫌だ」
と口に出される利用者もいらっしゃいました。
外国人介護職自身にとっても、言葉や文化の違いから、なかなか馴染めないケースがあります。
せっかく採用しても、生活環境や家族の事情で、短期間で帰国してしまう人もいます。
一方で、
「安心・安楽なケアが受けられるなら、人種は関係ない」
と考える方もいます。
実際、外国人職員を強く信頼し、心を許している利用者も少なくありません。
ただ、受け入れる側としては、
- 採用コスト
- 教育
- 生活面のサポート
など、施設の負担も小さくありません。
結局のところ、
- 日本人介護職
- 外国人介護職
- ロボットや機器
この中から「どれか一つ」を選ぶ話ではなく、
人手不足とコストの問題に対して、
その施設・その地域にとって、どの組み合わせが一番いいのか
を考える時代に、少しずつ移ってきているのだと思います。
ロボット時代に残る「人にしかできない介護」とは
では、ロボットや機器が発達した未来に、
介護職にしかできない仕事は何でしょうか。
私が大事だと思っているのは、次のような部分です。
- その人の人生の物語を聴き、背景ごと理解しようとすること
- 不安や怒り、悲しみといった揺れる感情を受け止めること
- 家族同士の葛藤に寄り添い、ときには間に入って調整すること
- 看取りの場面で、ただそばにいて、一緒に悩みながら支えること
こうした関わりは、マニュアル通りの“作業”にはなりません。
その場その場で迷いながら、
その人や家族の表情を見ながら、
「これでよかったのか」
と自問自答し続けるような仕事です。
こういう「揺れを含んだケア」は、今のところ、人間にしかできない領域だと感じています。
ロボット時代に求められる介護職のスキルとは
時々、こんな話を耳にしないでしょうか?
「ロボットが増えたら、スキルの低い介護職から仕事を失う」
確かに、決められた手順をただこなすだけの業務は、
ロボットや機器に置き換えられていく部分が出てくると思います。
でも、現場を見ていて私が感じるのは、
これから残っていくのは、
ロボット・制度・家族関係を含めて「全体を見渡せる介護職」
ではないか、ということです。
そのためにできることは、例えばこんなことです。
- 新しい機器が導入されたとき、面倒くさがらずにまず触ってみる
- その機器のメリット・デメリットを理解したうえで、利用者や家族に分かりやすく説明し、納得してもらう
- 「ここはロボットに任せても大丈夫なところ」「ここから先は、人がやらないといけないところ」を現場で考え、チームで共有する
- ロボットでは補えないコミュニケーション、看取り、家族支援の部分を、より高いレベルで提供していく
こうした、
“人と技術の橋渡し”ができる介護職
が、これからますます必要とされていくのではないかと感じています。
まとめ:ロボットがいる介護現場は、怖い未来なのか?
AIやロボティクスの発達スピードを見ていると、
人型ロボットやさまざまな介護ロボットが、
当たり前のように介護現場にいる日が来るのは、
そう遠い未来ではないのかもしれません。
ただ、そのときに起きるのは、
ロボットが人間を完全に追い出す未来
ではなく、
ロボットが“作業的なケア”を支え、
人間は“人にしかできないケア”に集中する未来
ではないか、と私は考えています。
介護職の未来は、決して真っ暗ではありません。
ただ、
「今と同じことだけを続けていればいい」
時代ではなくなっていく、というだけです。
ロボットと競争して消耗するのではなく、
ロボットと一緒に働きながら、
- 人にしかできないケア
- その人の人生に寄り添うケア
を磨いていくこと。
それが、ロボット時代の介護現場で介護職として生き残る道であり、
新しいやりがいを見つけていく道だと、私は思っています。
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