― 2027年に向けて、介護保険はどこへ向かうのか
こんにちは、hiroです。
介護保険制度がスタートしてから四半世紀がたち、いま再び大きな転換点を迎えています。最近のニュースでは、「ケアマネジャーの資格更新を廃止する方向」「介護職の賃上げ」「要介護1・2の“保険外し”が再び議論」といった、現場に直結するテーマが並んでいます。見出しだけを見ると、それぞれバラバラの話に見えますが、背景には共通するキーワードがあります。
それは「人材確保」と「財源の限界」ではないでしょうか?
この記事では、介護の現場で働く人や、家族のケアに関わっている人に向けて、最近の3つのニュースをできるだけわかりやすく説明しながら、「この先、私たちの仕事や暮らしに何が起きてきそうか」を一緒に考えていきたいと思います。
ケアマネ資格の「更新不要」ってどういうこと?
まずはケアマネジャーの資格更新の話からです。
現在の仕組みでは、ケアマネ資格は5年ごとに更新が必要で、そのたびに長時間の更新研修を受けなければなりません。
初回は約88時間、2回目以降でも32時間というボリュームで、フルタイムで働きながらこなすには、かなりの負担です。受講料も安くはなく、事業所側も人員調整に苦労します。
現場からは、
・更新研修が負担でケアマネを辞めた
・これを考えると受験に踏み切れない
といった声が長年上がっていました。
人材不足が深刻になるなかで、「本当にここまで重たい更新制度が必要なのか?」という疑問が強まり、国もようやく方向転換をし始めています。
いま検討されているのは、「資格そのものの更新制をやめる」という考え方です。
イメージとしては、ケアマネ資格を一度取れば、基本的には失効しない“終身資格”に近づけていくということになります。ただし、これは「もう勉強しなくていいですよ」という意味ではありません。一定の期間ごとに研修を受ける仕組みは残しつつ、その中身や時間、受け方を、もっと現実的な形に見直そうという方向です。
たとえば、
・研修時間を短くすること
・オンライン受講を増やして仕事との両立をしやすくすること
・費用の負担を軽くすること
などが、これからの具体的な論点になります。また、「ケアマネ個人が更新に追われる」のではなく、「必要な研修を修了したケアマネを、事業所としてきちんと配置しているか」を基準にする案も出ています。
現場目線で言えば、この動きは「ケアマネを続けやすくする改革」として歓迎できる部分が大きい一方、「研修の質は落ちないのか」「研修時間が減る分、どこまで実践力をカバーできるのか」という不安も残ります。
記事としては、「更新制は廃止の方向だが、学び続ける仕組み自体は残る」「人材確保と質の維持、その両立をどう図るかがこれからの大きなテーマ」という2点を押さえておくと、読者にもイメージしやすくなるはずです。
個人的に、以前からケアマネの更新制度は疑問に思っていました。ケアマネの更新の際の費用は大切な収入源だったのかなと、意地悪な見方をしてしたし、介護職にも研修制度があったもよいのではないか?とも思います。
ケアマネは、ケアプラン作成という介護サービスの土台を担う仕事であるため、より良いプラン作成に研修は必須と考えます。が、その負担はかなりのものと聞いていますので、少しでも負担軽減につながり、なりてを増やす策としても、とても有効な決定だと感じています。
介護職の給与アップは、本当に“上がった”と言えるのか
次に、介護職の賃上げの話です。ニュースでは「処遇改善で給与アップ」といった言葉が並びますが、現場の実感としては、「そんなに増えた気がしない」「むしろ物価の方が上がっている」という声も多いのではないでしょうか。
2024年度の介護報酬改定では、全体としてプラス改定となり、その中に介護職の賃上げ目的の分が組み込まれました。加算の仕組みも整理され、条件をきちんと満たして活用できれば、常勤職員で月数千円程度の上乗せが見込めると言われています。また、別枠として、一時金として数万円が支給される仕組みも用意されました。
ところが、制度上の「上げ幅」と、職員が手にする「現実」は以下の理由で必ずしも一致しません。
1,加算を取るためには事業所側の体制整備や書類対応が必要で、すべての事業所がフルに活用できているわけではない
2,加算を受け取ったとしても、その全額が職員の給与に回るとは限らず、経営を維持するためのコストにも使われていきます
3,仮に数千円アップしたとしても、物価高や社会保険料の負担増に飲み込まれてしまえば、「手取りの実感」は薄くなってしまう
4,介護職と一般産業との賃金格差がなかなか縮まらず、「このままでは人が集まらない」という危機感から、2026年度に臨時の介護報酬改定を行い、さらなる賃上げを検討する案も出ているが、ここもまだ“検討段階”であり、いつ、どの程度の率で実施されるのかは見えていない
介護職としてこの記事を読む人に正直に伝えるなら、「制度上は“上げる努力”はされているが、それでもなお生活実感とズレがある」「賃金の底上げと、介護報酬の財源、利用者負担のバランスをどう取るかという綱引きが続いている」というあたりが、本音に近いところだと思います。
物価の上昇は、勢いを止めず加速していていますよね。今月は○○品目が値上げになります。というニュースも驚かなくなってきました。介護職の給料は、税金と保険料から頂いている部分がある為、プログラマーのように『年収1000万』というのは難しい構図となっています。しかし、介護職は、物価上昇の波に遅れて、介護報酬の改定と言う流れがあり、給料が上昇するタイミングが遅れる傾向があります。
要介護1・2の“保険外し”は本当に起きるのか
3つ目は、要介護1・2の「保険外し」の議論です。
これは、要介護1・2の人が利用している訪問介護や通所介護などを、今の介護保険の給付から外して、市町村が行う総合事業や保険外サービスに移していこうという考え方です。言い換えると、「軽度者の生活支援は、これまで通りすべて保険で面倒を見るのではなく、地域の力や民間サービスも組み合わせて支えてほしい」という方向性です。
国がこうした案を出す背景には、介護保険財政の厳しさがあります。
高齢化が進み、給付費は右肩上がりです。その一方で、保険料や税金、利用者負担を無制限に上げるわけにもいきません。そこで、「比較的軽度とされる要介護1・2の人たちの一部サービスを、別の枠組みに移せないか」という発想が出てきます。
しかし、この「保険外し」は、2024年度改正では見送りになりました。利用者や家族、事業者、ケアマネから反対の声が非常に強く、「総合事業側の受け皿が整っていないまま移行すれば、サービスの質や量が落ちるのではないか」「市町村ごとの格差がさらに広がるのではないか」といった懸念が大きかったからです。
とはいえ、先送りされたからと言って、問題が解決したわけではありません。次の大きな改正となる2027年度に向けて、再び議論のテーブルに載せることが、すでに示されています。今の時点で多くの専門家は、「いきなり要介護1・2を丸ごと保険から外す」というところまで一気に行く可能性は低いと見ていますが、少なくとも生活援助の扱いなど、一部のサービスについて何らかの見直しが入る可能性は十分にあります。
現場としては、「サービスの内容がどう変わるか」「自己負担はどうなるか」「自治体によるサービス格差がどこまで広がるか」といった点が大きな関心事になるはずです。ケアマネの立場から見れば、「これは保険サービス」「これは総合事業」「これは保険外」という線引きを説明しながら、利用者と一緒にサービスを組み立て直す作業が増えることも想像できます。
まとめ:人材とお金、その板挟みの中で
ケアマネの更新制廃止、介護職の賃上げ、要介護1・2の保険外し――この3つのニュースの裏には、
✔「人を確保したい」
✔「給料ももう少し上げたい」
✔「でもお金には限りがある」
という、相反する条件が同時に存在しています。国はその板挟みの中で制度を設計しようとし、現場はその波をまともにかぶりながら、利用者と向き合っています。
この記事を読んで、「結局、どうなるの?」というモヤモヤが残ったかもしれません。それがある意味、いまの介護保険の「リアル」でもあります。制度は一気に変わらず、何度も議論され、少しずつ形を変えます。そのたびに不安も生まれますが、その一方で、現場の声が修正を引き出してきた歴史もあります。
これから数年、ケアマネや介護職としてできることは、ニュースの見出しだけに振り回されず、「何が決まったのか」「何はまだ“検討中”なのか」を冷静に見分けることです。そのうえで、自分の働き方やキャリア、利用者への説明の仕方を、少しずつアップデートしていく。そんな姿勢が、揺れる制度の中で自分を守りつつ、目の前の人を支え続ける力になるはずです。
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