高齢者の介護保険負担見直しへ、「2割」の対象拡大巡り所得基準議論…厚労省が年内に方向性

現行ルールをおさらい
65歳以上(第1号被保険者)の介護サービス自己負担は、
- 原則:1割負担
- 一定以上の所得がある人:2割 or 3割負担
ざっくりのイメージ(単身の場合):
- 年収 280万円未満 → 1割
- 年収 280〜340万円くらい → 2割
- 年収 340万円以上 → 3割 旭化成+1
世帯で見る場合は「65歳以上の世帯で346万円以上」など、もう少し細かい条件がありますが、基本は
「所得の高い高齢者ほど 1割 → 2割 → 3割 と自己負担が増える」
という仕組みです。北区公式サイト+1
それでも、2割・3割負担の人は認定者全体の1割弱にとどまっている、というデータもあります。中央社保協
ニュースのポイント:「2割負担」に誰まで含めるか
報道では、厚労省が社会保障審議会・介護保険部会で、
- 2割負担になる人の“所得ライン”を引き下げるか
- つまり、
「今よりも広い層の高齢者を2割負担にするか」
という議論を本格化させた、とされています。Livedoor News+1
今のラインはざっくり「所得上位2割(20%)」くらいを目安にしていますが、財政の持続可能性の観点から、
上位20% → 上位30%くらいまで広げるか?
といったシミュレーションが出されていて、
例えば、年収280万円クラスだけでなく、220万円台くらいの層も2割負担に含める案などが検討されています。日本医事新報社
ただし、
- 具体的な金額ライン(いくら以上を2割にするか)
- いつから実施するか
はまだ決まっておらず、「年内に部会として方向性をまとめる」という段階です。ケアニュース+1
同時に議論されている「他の負担増」候補
このニュースは「2割負担拡大」がタイトルになっていますが、同じテーブルで、他にもかなり重いテーマが並んでいます👇介護・福祉業界のニュース・最新情報なら介護経営ドットコム+1
- ケアマネジメント(ケアプラン)に利用者負担を導入するか
- 今はケアマネへの報酬は保険から出ていて、利用者負担は0円
- 「一部負担をしてもらうべき」という意見と
「入口に負担をかけるとサービス利用自体が減る」という強い反対が真っ向対立厚生労働省+1
- 要介護1・2の生活援助(訪問介護・通所の一部)を“地域支援事業”側へ移すか
- 事実上、保険給付から外す形になりやすく、
- 「軽度者のサービス削減・利用控え・家族負担増につながる」として、現場・当事者からは強い反対が出ている日本共産党+2ケアマネドットコム+2
- 高所得高齢者の介護保険料(1号保険料)をもっと上げるか
- 今も所得段階で9段階以上に分かれていますが、
さらに「高所得層はもっと負担」「低所得層は軽減」を強める案が検討中日本医事新報社+1
- 今も所得段階で9段階以上に分かれていますが、
これら全部を含めて「介護保険の持続可能性をどう確保するか」という大きなパッケージで議論されています。
反対の声・当事者団体の動き
認知症の人と家族の会など当事者団体は、
- 2割負担の対象拡大
- ケアマネへの利用者負担導入
- 要介護1・2生活援助の地域支援事業移行
などに強く反対し、オンライン署名を立ち上げています。公益社団法人認知症の人と家族の会
彼らが懸念しているのは、
- サービス利用控え → 生活が回らない → 介護・医療費トータルではむしろ増える
- 家族の介護負担が増え、介護離職・メンタル不調・家計悪化が連鎖する
といった「長期的な負のスパイラル」です。公益社団法人認知症の人と家族の会
介護現場・利用者への影響イメージ
- 2割負担の人が増える
- 今まで1割で使えていた人が、ある年を境に2割へ
- デイやショートの利用回数を減らす、訪問サービスを削る、という相談が増える可能性
- 説明・調整の場面が増える
- 「なぜうちが2割負担になったのか」「他の人と何が違うのか」
- 所得ラインの説明、高額介護サービス費・減免制度の案内など、相談援助のウエイトがさらに増えそうfr-kenpo.or.jp+1
- ケアマネ有料化・要介護1・2見直しまで踏み込まれた場合
- 支援の入口(ケアマネ)で利用控え
- 「軽度だから」とサービス対象から外される人のケア相談が地域包括や現場に集中
- 事業所としては稼働率や単価が読みにくくなる
まだ「案」「議論」の段階ですが、
“財政のために給付を削る方向”と、“生活・権利を守る方向”の綱引きがかなり強くなっている、というのが2025年秋の状況です。スマケア(SmaCare)+1
まとめ
- 今回のニュースは、
「介護保険の2割負担の対象をどこまで広げるか」
を年内に厚労省が方向付けしようとしている、という話。 - 同じテーブルで、
- ケアプラン有料化
- 要介護1・2生活援助の給付見直し
- 高所得者の保険料引き上げ
といった、現場に直撃する論点も同時進行中。
- まだ決定ではなく、“どこまで削るか/守るか”を巡る真っ最中の攻防。
制度の話はややこしいけれど、これはそのまま「利用者の生活」と「現場職員の働き方」に直結するテーマなので、
現場サイドからの声(利用控えの実態・生活のギリギリ具合・家族の負担感など)をどう届けていくかが、今後かなり重要になってきます。
「2025年改正・育児介護休業法 介護離職防止は“会社の義務”に」

2024年5月に育児・介護休業法が改正されて、
2025年4月1日と10月1日に分けて施行されています。
記事はコチラから👉中小企業育児・介護休業等推進支援事業|いくぷら(パソナ)+1
ポイントは大きく2つ。
- 介護離職を防ぐための仕組みづくりを、すべての企業に義務化(2025年4月〜)
- 子育て世帯向けの「柔軟な働き方」制度を整えて、個別に声かけすることを義務化(2025年10月〜)
背景
法律の改正があった背景として、介護離職やビジネスケアラーの増加があるという。
介護の為、仕事を辞めることで収入が減り、生活も厳しくなり、心の余裕がなくなり、介護放棄などに繋がるケースもあるだろう。仕事をしながら、介護をされている方も多くなってきて、心身ともに疲弊してしまう。国もそこを鑑みて、策を練ってくれていることには感謝したい。
2025年4月施行分:何が変わった?
厚労省と委託サイトの整理だと、4月施行分は9項目(育児+介護)ありますが、
介護寄りで大事なのはこのあたりです。
① 介護休暇の対象者拡大
- 以前は「継続雇用6か月未満の人」は、労使協定で介護休暇の対象外にできた
- この「6か月未満除外」が廃止
→ 入職したてでも介護休暇を取れるようにするのが原則になった
② 介護離職防止のための「雇用環境整備」が義務化
事業主は、次の4つのうち少なくとも1つ以上を必ずやる義務。
- 介護休業・両立支援制度についての 研修
- 介護と仕事の両立に関する 相談窓口の整備
- 介護休業や両立支援制度の 利用事例の収集・提供
- 「うちは介護と仕事の両立を支援します」という 方針の周知
本当は複数やるのが望ましい、とされてます。
③ 「介護に直面した社員」への個別周知・意向確認が義務化
- 「親の介護が必要になりそうです」などの申出があった社員に対し、
- 介護休業・介護両立支援制度の内容
- 申出先
- 介護休業給付金の概要
…などを個別に説明し、制度利用の意向を確認することが義務に。
- 方法は、面談・書面・メールなどでOK(オンラインも可)
④ 「40歳前後の社員」への早めの情報提供が義務化
- 従業員が 40歳になる前後の1年間 に、
自社の介護両立支援制度や介護保険制度などを個別に案内する義務。
「問題が起きてから」ではなく、
「介護が始まる前から、制度と選択肢を知らせておきなさい」 という発想です。
⑤ 介護のためのテレワーク導入が「努力義務」に
- 要介護の家族を介護する社員が、
テレワークを選べるようにするよう努めなさい、という努力義務が追加。
2025年4月施行分:育児まわりの主な変更(ざっくり)
介護とセットで押さえておくといいところだけ。
- 子の看護休暇 → 子の看護「等」休暇に名称変更
- 対象:小学校就学前 → 小3修了までに拡大
- 取得理由:病気・けがだけでなく、学級閉鎖、入園式・卒園式などもOK
- 残業免除の対象を拡大
- 対象:3歳未満 → 小学校就学前までの子を養育する労働者に拡大
- テレワークを「育児のための短時間勤務の代替措置」に追加
- 育休取得状況の公表義務の対象拡大(1000人超 → 300人超企業)
2025年10月施行分:柔軟な働き方まわり
ここがニュースで言っている「柔軟な働き方を促進」の本丸。
⑥ 3歳〜就学前の子どもを育てる社員向け「柔軟な働き方」の制度化(義務)
事業主は、3歳〜小学校就学前の子を養育する社員のために、
次の5つのうち2つ以上の制度を用意する義務があります。
- 始業時刻等の変更(フレックス・時差出勤など)
- テレワーク(月10日以上)
- 保育施設の設置運営・ベビーシッター費用補助など
- 養育両立支援休暇(年10日以上)
- 短時間勤務制度(所定労働時間を原則6時間にするなど)
労働者はその中から 1つを選んで利用できる仕組みにしなさい、という話。
⑦ その制度の「個別周知・意向確認」が義務化
- 対象:3歳未満の子を養育する社員
- 子が1歳11か月〜2歳11か月の間に、
- どんな制度があるのか
- 申出先はどこか
- 残業免除・時間外制限・深夜業制限の内容
を個別に知らせて、利用するかどうか意向を確認する義務。
⑧ 仕事と育児の両立に関する「意向聴取と配慮」が義務化
- 妊娠・出産の申出があったとき
- 子が1歳11か月〜2歳11か月の間
などのタイミングで、
勤務時間帯・勤務地・業務量・両立支援制度の利用期間などについて本人の希望を聞き、できる範囲で配慮しなさい、という義務。
実務では何が必要?
就業規則の整備、テレワークや短時間制度の運用設計が必要。
介護と両立の雇用管理をアップデート。
具体的には:
1. 就業規則・育児介護規程の改訂
- 子の看護等休暇・介護休暇の要件変更
- 残業免除の対象拡大
- 柔軟な働き方の5つの措置のうち、自社で何を採用するか
- 介護テレワークや相談窓口の位置づけ など
厚労省は就業規則の規定例や様式集まで出していて、
「令和7年4月1日・10月1日施行対応版です」と明記されています。厚生労働省+1
2. テレワーク・短時間勤務など「制度の中身」を決める
- どの職種ならテレワーク可能か
- 何日まで・どんな業務に限るか
- 時短勤務とシフトの組み方
- 介護でのテレワーク利用申請の流れ など
介護事業者向けの解説では、
「シフト作成への影響が大きいので、運用イメージを先に設計しておけ」
と強く書かれています。FC Soft
3. 研修・相談窓口・40歳前後への情報提供の運用
- 管理職向けに「部下が介護に直面した時、どう声をかけるか」研修
- 相談窓口(人事・総務・外部窓口など)の明確化
- 40歳になる社員リストを出し、毎年どのタイミングで案内するかのフローづくり
4. 正直、まだ対応できてない企業が多い
マイナビの調査では、
4月の改正から半年経っても、「介護離職防止の雇用環境整備をしていない企業」が36.9%、
そのうち 56.1%は「今後も予定なし」 と回答。マイナビキャリアリサーチLab | 働くの明日を考える
つまり法律上は義務なのに、現場対応はまだまだこれから、というのが実情です。
介護施設で運用は可能か?
テレワークの導入、時短勤務、フレックスタイム制など聞こえの良い言葉が並んでいるが、介護現場での運用は可能なのか?答えは、NOではないだろうか。
理由としては、まず現場の介護職員はテレワークはできない。直接、身体介護をしている為、現場に人がいる必要がある。また、時短勤務は、パートとして運用を考えれば可能だが、人員不足が収まらない様子は変わらず、仮に時短職員が日勤帯に集中していても、介護現場には早番、遅番、夜勤、などの勤務帯がある為、時短勤務希望者が複数いる場合は運用が難しくなってくる。そのような理由で、介護現場へすぐの導入は難しいのではないか?
しかし、今後、運用が必須になる可能性もゼロではないだろう。その為に、『導入するにはどうすればよいか?』と言う視点で見ていくと意外と運用が可能となるかもしれない。
在宅介護と施設介護では、施設のほうが割安になるって本当?

内容:平均的な5年間の介護なら在宅のほうが300万円くらい安いって試算だけど、条件によっては施設のほうが割安になるって本当? と言うもの。
記事はコチラから👉 マネーポストWEB+1
在宅介護(要介護1くらいを想定)
- 住宅改修の初期費用:
手すり・スロープなどで 平均 約74万円 - 介護サービスの自己負担:
- 訪問介護7〜8時間/月:自己負担 約718円(足立区の例)
- デイケア1回:自己負担 約841円
- ショートステイ:1日 約4000円
- 週3回の訪問orデイ+週2回ショートステイで
→ 介護サービス分が 月約4万円 - 光熱費や食費なども含めると
→ 月トータル 約8万円
施設介護
- 有料老人ホームなどの平均費用:
→ 月 約13万8000円 - これを「平均的な介護期間5年」で計算すると
- 在宅:ざっくり 約500万円台
- 施設:約828万円
⇒ 差が 約300万円 というロジック マネーポストWEB
なので記事の「在宅介護が300万円安い」は、
・要介護1レベル
・在宅サービスを上手く使う
・5年間
・東京の一部自治体の単価
という“モデルケース”の話です。
「夫婦で施設の方が割安になる」ってどういう意味?
記事の後半では、
- 夫:要介護4
- 妻:要介護2以上で車いす
みたいな 夫婦とも介護度が高いケース を例にしてます。マネーポストWEB
このレベルになると、
- 自宅に住み続けるには
- 大規模なバリアフリー改修
- エレベーター付きマンションなどへの住み替え
- 介護サービスもガッツリ利用
- そのうえ家族の負担も大きい
という状況になるので、
家を売って、利便性の高い中古マンションに住み替える or
いっそ夫婦で施設に入る方が、
「トータル費用+身体的負担」のバランスがいいケースもある
という考え方を紹介しています。マネーポストWEB
大事なポイント:数字は「目安」でしかない
この300万円差の話、SNSやnoteでもさっそくいろいろ突っ込まれてます。
などなど。
実際のところ、費用を左右するのは:
- 要介護度(1と5では別世界)
- 介護保険の自己負担割合(1〜3割)
- どこに住んでいるか(都市部か地方か)
- どれだけ家族が介護に入れるか(時間・体力)
- 住まいの状況(持ち家か賃貸か、エレベーター有無など)
なので、
「一般論としては、軽い要介護度なら在宅の方が安くなりやすい。
ただし、要介護度が上がる・夫婦とも要介護になると、
条件によっては施設の方が“割安&安全”になることもある」
というくらいの理解が現実的です。
まとめ
【ポイント】「在宅=安い」は家族の無償労働も含めた“見かけの安さ”であることも往々にしてある。家族介護は人件費がかからないので、金銭的には良いが、介護をする側の精神面や体力面を考えると永遠には続かない事は配慮は必要である。また、自宅が介護に適していないと十分なケアは難しい。特養に相談に来る方も、家で車いすは使用できないという理由で、在宅介護は難しいという方も多いのが現状。
行動に移す為に
介護が必要になったら、まず行く場所は『地域包括支援センター』がおすすめである。そこで、ケアマネに相談してパターンを比較する。
・「在宅か施設か」ではなく、「今は在宅、重くなったら○○」と段階的に考える
『最期は家で・・』と言う方は多いが、実際は難しいケースが多い。介護施設は、常に申し込み者がいるため、すぐに入所できるわけではない。その為、介護度が重くなる前の早めの段階から申し込みだけでもしておく事をお勧めしている。
結論
「平均的な5年間」で言えば、たしかに在宅の方が“お金だけ見れば”安く済みやすい。
でも、介護度が上がる・夫婦とも要介護になる・家族が働きながら介護する、
みたいな条件が揃ってくると、施設の方が結果的に“割安で安全”になるケースも普通にある。介護に人生を捧げることは素晴らしいが、家族にもそれぞれ人生がある。
なので、「どっちが安いか?」という二択というより、
「どんな状態のときに、どの選択肢が現実的か」 を考えることが大切。
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