プライバシー配慮の見守りからケアプランAIまで、最新動向を5つ深掘り解説
こんにちは、hiroです。
毎週公開している「介護News」ですが、今回は 介護×AI に特化した回です。
AIの登場で、生活も仕事も一気に効率化が進みました。
介護の現場では、人手不足・重度化・情報量の増加・記録の負担…と課題が年々重くなるなかで、
“負担を減らしながら、安全と質を上げるAI技術” が急速に伸びています。
この記事では、2025年に発表された「介護×AI」のニュースから 5つの最新トピック を厳選し、
単なる紹介ではなく、技術の中身・現場へのインパクト・導入時の注意点 まで深掘りして解説します。
富士通「ミリ波レーダ見守りシステム」

― カメラを使わず、呼吸の変化まで捉える“非カメラ型見守り”
背景:カメラを置けない場所の“見えないリスク”
転倒や急変は、居室だけでなく トイレ・浴室・バリアフリートイレ で起こることが多いのに、
プライバシーの観点からカメラが置けず、「倒れても気づけない」というジレンマがありました。
記事はコチラ👉Fujitsu News
富士通の「ミリ波レーダ見守りシステム」は、この“見えない空間”をカバーするために開発されています。
技術のポイント:ミリ波レーダ+AI
- ミリ波レーダ
30〜300GHz帯の電波を使い、人の動きや体の振動を点群データとして取得
このシステムでは60/79GHz帯を使用し、暗所でも利用可能で個人情報(顔などの映像)は取得しない。 - AI解析
・身体の動き
・呼吸
・筋肉の微細な振動
などをAIで解析し、
「転倒後起き上がれない」「特定場所から長時間動けていない」「呼吸状態が怪しい」などを自動検知。 - 薬機法上は医療機器ではない
生命維持装置ではなく、あくまで「見守り補助」の位置づけ。
導入シーンの具体例
- 特養やサ高住の 個室・トイレ・浴室
- 商業施設などの バリアフリートイレ(イオンモールでの実証実験あり)
- 夜間の入院病棟での転倒・急変見守り
例えば「トイレで5分以上動きがない」「転倒後、胸部の微細な振動だけが続いている」など、
従来の人感センサーでは拾いづらかった変化 まで検知できるのが強みです。
メリット
- カメラ映像が残らないので、利用者・家族の心理的ハードルが低い
- 夜間の巡視頻度を減らしつつ、リスクの高いケースはアラートでフォロー
- 暗い場所でも検知でき、照明条件に左右されない
注意点・課題
- 初期導入費用・工事コストはそれなりにかかる(天井設置が想定される)
- 職員側の「何がアラート対象なのか」を理解した運用ルール作りが必須
- 「見守り=監視」と誤解されないよう、家族・本人への丁寧な説明が必要
ポイント:
「カメラは嫌だけど、安全性は高めたい」という施設・家族にとって、かなり相性の良い選択肢になります。
東電タウンプランニング「Ace care」
― 骨格検出AIで「転倒・臥床・在室・不在」を可視化
背景:カメラの“活かし方”が変わる
これまでの見守りカメラは「録画はできるが、結局人の目で確認が必要」でした。
「Ace care」は AIがカメラ映像から骨格を認識し、状態を自動判定 してくれるサービスです。
記事はコチラ👉ttplan.co.jp+1
関東1都6県+山梨・静岡東部での提供開始が発表されており、まずは関東圏から普及が始まっています。
記事はコチラ👉ttplan.co.jp
技術のポイント:骨格検出+状態分類
- カメラ映像から人の「骨格」を抽出
- AIが姿勢や位置を解析し、
- 転倒
- 臥床
- 在室
- 不在
を自動判定し、画面上にピクトグラムで表示。
- 転倒時には「色と音」でアラート
- 映像は24時間録画され、事故発生時の振り返りにも利用可能
実証では 転倒検知率97.7% と報じられており、一定の精度が確認されています(対外的な報道ベース)。
導入シーンの具体例
- 特養・老健・有料老人ホームの居室・共用部
- 夜間ワンオペに近い時間帯の見守り強化
- 転倒が多いフロアの重点監視
ナースステーションや事務所のモニタに「誰がどこにいるか」「床に倒れていないか」が一覧表示されることで、
“巡視で探し回る”時間を減らし、必要なところにピンポイントで動ける ようになります。
メリット
- 転倒の「見逃し」が大幅に減る
- 映像が残ることで、家族説明・事故検証がしやすい
- 共用部の行動も見えるため、徘徊・不穏への早期対応にもつながる
注意点・課題
- カメラ映像を扱うため、プライバシー・個人情報保護 のルール作りが必須
- 入浴や排泄など、カメラを設置しづらいエリアも残る
- 機器トラブル時のバックアップ(従来の巡視頻度など)をどう設計するか
ポイント:
「Ace care」はカメラ前提の施設向け。
さきほどの富士通は“非カメラ型”、こちらは“カメラ+AI型”と整理して比較すると分かりやすいです。
電通総研「DigSports フレイモ」

― フレイル・転倒リスクをイベント感覚で“見える化”
背景:フレイル予防は「楽しくないと続かない」
フレイル(虚弱)とは、高齢になって、筋力や活動が低下している状態を言います。健康と病気の中間の段階で、進行すると寝たきりや廃用症候群になる恐れがあります。
厚労省は「健康日本21」などで、自治体に健康増進計画の策定やICT活用を求めています。
記事はコチラ👉電通総研
一方で、フレイル予防教室は「測定が難しい」「結果が分かりにくい」「続かない」という課題がありました。
電通総研の「DigSports フレイモ」は、
AIを使って体力測定と転倒リスク可視化を“イベント感覚”で実施できるシステム です。
技術のポイント:簡単測定+AI評価
- WebカメラとPC/タブレットを用意し、ガイダンスに沿って動くだけ
- AIが
・柔軟性
・俊敏性
・筋力
・バランス能力
などを解析し、転倒リスク・身体的フレイルをスコア化 - 特許取得の「着座姿勢での体幹回旋運動」を利用し、立位が難しい人でも測定可能
- 測定直後に、運動や食事のアドバイスを含んだレポートを即時出力
導入シーンの具体例
- 自治体の介護予防教室・フレイルチェックイベント
- 通所介護(デイ)の集団評価・イベントデー
- サ高住や高齢者住宅の「健康フェア」
「今日はフレイルチェックの日です」として、
測定→結果を見ながら保健師や理学療法士と話す→目標設定
という流れを組みやすくなります。
メリット
- 専門職でなくても、ガイダンスに沿って測定運営ができる
- 着座で測定できるため、転倒リスクの高い人にも安全に実施可能
- 結果がグラフやスコアで出るので、利用者自身のモチベーションにつながりやすい
注意点・課題
- あくまで「スクリーニング・気づき」のツールであり、診断ではない
- 測定結果をどう継続支援(通いの場、運動教室など)につなぐかは、自治体や事業者の設計次第
- 機材の準備・通信環境など、イベント運営の基本的な段取りは必要
ポイント:
施設内の“リハビリ評価ツール”というより、
「地域・自治体の介護予防イベントと相性が良いAI」 と捉えるとイメージしやすいです。
Alexa Smart Properties 介護活用が全国に拡大

― 音声AIが「連絡・リマインド・見守り」をつなぐ
背景:独居高齢者と“遠距離介護”の不安
Amazonの調査では、離れて暮らす高齢の家族を介護・支援している人の多くが、
「緊急時に気づけるか」「毎日の健康状態がわからない」といった不安を抱えています。
記事はコチラ👉プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES
そうした中で、音声AIアシスタント「Alexa」を施設・集合住宅・自治体で一括管理できる仕組み が
「Alexa Smart Properties」です。日本でも、介護施設・自治体での導入が全国各地に広がっています。
機能のポイント
- 家族とのコミュニケーション支援
・音声やビデオ通話を簡単に
・決まった時間に「お孫さんからメッセージ」的な仕掛けも可能 - リマインド機能
・服薬時間、水分摂取、通院予定などを音声でお知らせ
・繰り返し設定ができるため、認知機能が低下してきた人の支えになる - 見守り・生活リズムの把握
・反応がない時間帯が続くと家族や事業者側で把握
・スマートホーム機器と連携すれば、照明や家電の使用状況から生活リズムを推定
調査では、「見守りや介護に役立つ」が約8割、「高齢者とのコミュニケーションが改善」が6割以上という結果も示されています。
導入シーンの具体例
- 独居高齢者への自治体見守り事業
- サ高住・高齢者向け住宅での「家族連絡プラットフォーム」として
- 施設内の館内放送・お知らせ・レクリエーションの音声ガイド
メリット
- スマホ操作が苦手でも「話しかける」だけで使える
- 家族側の安心感が高まり、精神的な負担が軽減
- 事業者側は「誰に何を伝えたか」を一元管理しやすい
注意点・課題
- ネット環境・電源の確保が前提
- 常時マイクがオンであることへの心理的ハードル
- 個人情報の扱いについて、利用者・家族への丁寧な説明が必要
ポイント:
“見守りセンサー”というより、
「コミュニケーション+見守り+生活支援」をまとめて担う音声UI として見ると、可能性が大きい領域です。
ケアプラン生成AI(CDI「SOIN」など)の実装が前進

― アセスメント自動補完&要支援の帳票3分作成
背景:ケアマネの「時間が奪われる構造」
ケアマネの仕事は、アセスメント・会議・サービス調整・記録・給付管理など多岐にわたり、
特に アセスメントと帳票作成 は膨大な時間を取られています。
CDIの「SOIN」は以前からケアプラン作成支援ツールとして知られていましたが、
2025年9月25日のバージョンアップで、AI補完機能が大きく強化されました。
記事はコチラ👉cd-inc.co.jp+1
技術のポイント:ビッグデータ×AI補完
〇アセスメント入力自動補完機能
・要介護認定調査項目の一部(十数項目)を入力
→ 匿名化された約50万件の認定調査データをもとに、残りの項目をAIが推定し、ケアマネに提示
記事はコチラ👉プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES
〇介護予防サービス・支援計画書の自動作成
・要支援の計画書を対象に、3分程度で帳票を生成できるレベルまで自動化
過去のデータやアセスメント内容から、「よくあるパターン」をAIが学習し、
ケアマネの検討材料として提示するイメージです。
現場へのインパクト
- アセスメントと要支援の帳票作成時間が大幅に短縮
- 入力漏れ・矛盾チェックの自動化と合わせて、監査リスクの軽減にもつながる
- ケアマネが「記録のための作業」ではなく、「利用者・家族との対話」に時間を回せるようになる
監査・倫理面での注意点
- AIが吐き出した内容を「そのまま採用」するのは危険
→ 必ずケアマネの臨床感覚・面接内容に基づき、取捨選択・修正が必要 - 監査対応のため、
・どの入力からAIがどう推定したか
・ケアマネがどこを修正したか
といった「根拠ログ」を残す設計が非常に重要になります。
ポイント:
ケアプランAIは、ケアマネを置き換えるものではなく、
「思考を補助し、入力作業を軽くするツール」 として捉えるのが現実的です。
特養で、短期入所生活介護を受け入れる際に、金銭的なやり取りの『請求業務』がありますが、ケアマネが設定した基本単位数が違う事が良くあります。そのたびに、電話でやり取りするという時間があり、とてもロスに感じます。AIの導入により、そのようなロスタイムをなくしていく効果もあると考えます。
まとめ:AIは“人を減らすため”ではなく“人を活かすため”のインフラへ
今回紹介した5つの動きは、それぞれ対象が少しずつ違います。
- 富士通:カメラを使えない プライバシー空間の見守り
- Ace care:カメラ前提の 骨格検出型見守り
- DigSports フレイモ:自治体・地域での フレイル予防イベント
- Alexa Smart Properties:独居・施設・自治体をつなぐ 音声AIプラットフォーム
- ケアプラン生成AI:ケアマネ業務の アセスメント・帳票の効率化
共通しているのは、
「人手不足だから人を減らす」のではなく、
“人が本当にやるべき対人支援”に時間を取り戻す方向に向かっている という点です。
これから数年で、介護現場の標準装備は大きく変わっていきます。
AIを「怖いもの」として避けるのか、
「うまく使って、自分たちのケアの質を上げる武器」にするのか——
今のうちに情報を押さえておくことが、現場の未来の差になっていきます。
〇関連記事
✔介護業界の今がわかる!週刊介護News(11月14日版) | 介護しよ.net/blog
✔介護現場の“やっちまった”3選――夜勤の後悔と学び | 介護しよ.net/blog
✔【保存版・第2部】包括支援事業と任意事業の全体像|相談・権利擁護・家族支援まで最短整理 | 介護しよ.net/blog
〇介護情報誌『おはよう21』~1冊から購入できますが、定期購読がおすすめです~
- バックナンバーのデジタル版が見放題
- 最新号が毎月届くので買い忘れなし
- 継続的に学びが積み重なり、スキルアップにつながる
〇 noteを始めました。
こちらでは介護に限らず、私が普段思う事や、趣味など自由な内容を記事にしていきますので、
こちらからどうぞ👉hiro|note


コメント