「私はまだ食べられる。私を殺す気なの?」—介護職が飲み込んだ言葉

介護

こんにちは、hiroです。

介護の仕事をしていると、「正しいことをしているはずなのに、心が追いつかない瞬間」があります。
本人は明確に“食べたい、飲みたい、トイレに行きたい”と言っている。

けれど、身体の状態、医師の指示、事故のリスク、そして現場の体制など、
いろいろな理由が重なって、その希望にそのまま応えられないことがあります。

今日は、そんなときに私が抱えた“もやもや”を、きれいにまとめずに書きます。
※本記事は医療的判断を勧めるものではありません。個人が特定されない形で、経験を一般化して記載しています。


「私は食べられる。私を殺す気なの?」

嚥下機能が落ちてきて、食事中のむせ込みが増えた方がいました。
本人ははっきり言うんです。

「食べたい」と。

こちらも分かっている。
食べることは楽しみで、生きる力で、その人の“その人らしさ”に直結している。

でも一方で、誤嚥や窒息は一瞬で命に関わってしまう。
「安全のため」という言葉は正しい。けれど、正しい言葉だけでは、目の前のその人の気持ちを救えないことがある。

食事を止める判断になったとき、本人からこう言われました。

「私は食べられる。私を殺す気なの?」

その場では「分かりました。看護師にも伝えますね」と返しました。
でも……正直、言葉が続きませんでした。
説明すればするほど、言い訳に聞こえる気がしたからです。

この言葉を聞いたのは、たぶん私だけでした。

その方はクラシック音楽が好きで、私も好きだったこともあり、普段はよくお話しする機会がありました。だからこそ、余計に胸に残りました。

その後、上長に報告し、「少しだけでも口から食べられないか」と提案しました。
ただ、主治医からの返事はこうでした。

””水分なら良い。ただ、とろみが弱いと誤嚥のリスクがある。
一方で、とろみを強くすると喉に張り付く可能性もある””

甘いものが好きな方でした。訴えがあったときは、ジュースを“数滴”だけ、口を湿らせる程度で対応することになりました。

数日たつと、口を湿らせたあとも声を出すのが難しくなっていきました。
そして最初の訴えから、1週間ほど経った朝に息を引き取られました。

穏やかな方でしたが、表情が少しずつ険しくなっていったのが、とても印象に残っています。
最期まで身の回りのことをご自身でされる、とても強い方でした。

悔しかったんだろうな。切なかったんだろうな。
そう思ってしまいます。

「食べたい」と思っているのに、体はもうそれを受けつけない。
その現実を目の前で見るのは、本当につらい。今でも脳裏に焼き付いている経験です。


“もやもや”が増える場面

この経験のあと、似た種類の“もやもや”に何度も出会いました。

  • 本人は望んでいるのに、状態的に難しいとき
  • 家族の希望(延命・経口)と、本人の表情(苦しさ)が一致しないとき
  • 医師の指示があり、現場の判断で動けないとき

こういう状況では、個人の思いだけで動けません。
良かれと思った行動が、逆に命を奪ってしまうかもしれないからです。


最後に

介護職は、医師でも看護師でもありません。医療的な判断や行為はできない。
看取りの場面では、介護職としてできることが限られることもあります。

それでも、できることはあります。
尊厳を守ること。清潔を保つこと。声をかけること。そばにいること。

病気を治すことはできなくても、その人に寄り添うことはできる。
元気なときも、弱っていくときも、同じように尊厳を守る。
それが介護の“苦しさ”であり、同時に“やりがい”でもあるのだと思います。

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