介護の未来はもう始まっている?
こんにちは、hiroです。
今回は、前回の介護の未来についての続きの記事となります。
前回までの
①介護職の仕事はロボットに奪われるのか?ロボット時代に求められる介護職とは
②ロボット時代に、介護職として何をするべきか
をご覧になり、こんな疑問の声が聞こえてきそうです。
・ロボットに介護なんて、まだまだ先の話でしょ?
・ロボット技術がどこまで行っているのか知らない。
・介護業界は、結局変化できないのでは?
そう思いたくなる気持ち、よく分かります。
でも実は、“介護の一部をロボットが手伝っている未来” は、もう静かに始まっています。
この記事では、
- 卵を割らずにつかめるロボットアーム
- 自動で体位変換してくれるベッド
- ベッドから車いすへの移乗を手伝うロボット
など、ロボティクスの「現状」を、介護の現場目線で紹介していきます。
卵を割らずに持てるロボットアームって何者?
まずは「卵を持てるロボットアーム」の話から。
利用者の中には、
・内服している薬の関係で、少し力でも、皮下出血や剥離してしまう方
・極端に言うと、骨折してしまう方
がいらっしゃいます。その為、介護には、力加減はとても大切です。
ロボットに力の加減なんて無理でしょう?
と思う所ですが、研究の世界では、
- 生卵や卵黄を割らずにつかめる
- 生卵だけでなく、パスタや人の髪の毛をつまめる
- しかも、重いものも同じアームで持てる
といった “力加減の天才”みたいなロボットハンド・ロボットグリッパ が次々と開発されています。
また、ロボットアームの動きをなめらかにして、
卵をやさしく持ち上げたり、食器を積み上げたりできるようにする研究も進んでいます。
記事はコチラから👉 北東部のエンジニアが機敏なロボットアームを開発
ポイントはここです。
「ガシャン!」とつかむロボットから、
「そっと」「ほどよく」つかめるロボットへ
つまり、
- 物を壊さないように力をコントロールする技術
- 衝撃を吸収する柔らかい素材や構造
- 触覚センサーで“押しつぶし過ぎない”制御
こうした技術がどんどん育ってきている、ということです。
この「卵を割らないロボットアーム」がそのまま介護に来るわけではありませんが、
- 皮膚の弱い高齢者の腕を支える
- 関節を動かすリハビリをサポートする
- デリケートな部位のケアを補助する
といった “力加減が命” の場面に応用される可能性は、十分に見えてきています。
体位変換は「ベッドの仕事」になりつつある
次に、介護現場でかなり実用化が進んでいるのが自動体位変換ベッドです。
体位変換は、介護職の仕事の中でも、負担が大きい業務の一つです。
なぜなら、褥瘡予防、褥瘡対策で必須の事項で、おおむね2時間毎に行わなければいけません
夜勤中に、体位変換をしたがために、利用者が起きてしまったという事はよくある事で、夜勤中に利用者が起きてしまうと、それだけで職員の負担が2倍、3倍に感じられます。
そういう中で、体位変換をベッドが代替してもらえるという事は、かなりの負担軽減になります。
例えば、
- France Bed の「自動寝返り支援ベッド FBN-640」
- ベッドのボトムが左右にゆっくり傾いて、体圧を分散しながら体位変換
- 角度や速度、時間を設定して最大24時間自動で体位変換
- 夜間の体位変換を“ベッドに任せる”イメージ
- パラマウントベッドの「ここちあ利楽flow」
- AIで利用者の体重・体型などを学習し、
“ちょうどいいかたさ・動き”を自動制御 - 自動体位変換機能やバックサポート機能付き
- AIで利用者の体重・体型などを学習し、
- CAPEの「スモールチェンジ」エアマットレス
- 約15分ごとに小さな体位変換を自動で繰り返す
- 利用者の快眠と、介護者の負担軽減を両立させる設計
これらは、いわゆる「人型ロボット」ではありません。
けれど、役割で見ると「体位変換ロボット」そのものです。
- 夜中に何度も体位変換で呼ばれる
- 腰を痛めながら体位変換をしている
こういった場面を、少しずつ**“ベッド側の仕事”に置き換えていく流れ**が、すでに現場レベルで始まっています。
ベッドから車いすへの移乗を助けるロボット
介護職の腰を壊しがちな「移乗介助」も、ロボティクスが入り始めた分野ですので、こちらも一部ご紹介したいと思います。
ベッドと車いすが一体化した「リショーネPlus」
パナソニックの「離床アシストロボット リショーネPlus」は、
ベッドとフルリクライニング車いすが一体になったロボットです。
記事はコチラから👉Panasonic Group
特徴としては、
- ベッドの一部がそのまま電動車いすに変形
- 寝たきりの状態のまま、「持ち上げずに」車いす状態へ移行
- それまで2〜3人必要だった移乗が、1人で対応できる
- 腰痛リスクの大幅な軽減、転落事故リスクの低減
利用者側から見ても、
- 体を持ち上げられる不安や痛みが減る
- 安楽姿勢のまま、食堂やレクリエーションに移動できる
- 「もう離床は無理」と思われていた人の生活の幅が広がる
といったメリットが期待されています。
記事はコチラから👉介護ロボット導入活用事例集 2018
人を抱き上げるロボット「RIBA」「RIBA-II」
研究開発レベルでは、
人を抱き上げて移乗するロボットも登場しています。
- 理研の「RIBA」
- 約61kgの人をベッドから抱き上げ、車いすに移乗
- 触覚センサーを使い、姿勢や位置の変化に柔軟に対応
- 後継の「RIBA-II」
- 抱き上げ可能重量を約80kgまで拡大
- 床からの抱き上げ移乗も実現
まだ一般の施設に量産・普及している段階ではありませんが、
「人をやさしく抱き上げるロボット」
というコンセプト自体は、すでに“実験レベル”ではなく“現実の技術”になってきています。
現状のロボティクスから見える「共通点」
ここまでの事例を並べると、
最新ロボティクスにはいくつか共通点があります。
1.「全部できるロボット」ではなく、「1つに特化したロボット」
こちらの記事でもご紹介したように、介護ロボットは一体のロボットがすべてを担うのではなく、各分野に特化したロボットがそれぞれの役割を果たす方向に向かうのではないかと考えています。
- 卵を割らないロボットハンド → 「つかむ・持つ」に特化
- 自動体位変換ベッド → 「寝返り・体圧分散」に特化
- リショーネPlus → 「ベッド⇔車いすの移乗」に特化
- RIBA → 「抱き上げ・移乗」に特化
1台で“何でもやる”人型ロボット
ではなく、
「一つの動作に特化したロボットやベッド・機器」が組み合わさっていく
──これが、現実的なロボット介護の姿に近いと感じます。
2.安全性と「力加減」が最優先
- 卵を割らないロボット
- 体を持ち上げずに移乗する機構
- ゆっくりと傾く体位変換ベッド
共通しているのは、「強さ」より「優しさ・安全性」が重視されていることです。
介護のロボットに求められるのは、
- 大きな力 → ではなく
- 「必要な分だけ、やさしく力を出す」こと
このために、
- 触覚センサー
- 柔らかい素材
- AI制御
- 安全規格(ISOなど)
といった技術や仕組みが組み合わされ始めています。
記事はコチラから👉介護支援ロボットRIBA-IIの動作設計と評価実験
3.「人を減らす」より「負担を減らす」方向に使われている
今の段階では、
- 夜勤の巡視回数を減らす
- 腰を壊すような移乗・体位変換の負担を減らす
- 離床をあきらめていた人の生活範囲を広げる
といった、“負担を減らすためのパートナー”としての使われ方が中心です。
いきなり「ロボットだけで介護する」世界が来るのではなく、
「しんどいところから、少しずつロボットが肩代わりしていく」
そんな進み方をしているように見えます。
介護職・家族にとって、このロボティクスの現状は何を意味する?
ここまでの話を、現場目線でまとめるとこうなります。
- 「ロボット介護」は、まだSFの世界ではない
- すでに「体位変換」「移乗」「寝返り」「見守り」など、
一部のケアは機器・ロボットに任せられる段階に来ている - 卵を持てるロボットアームのような“繊細な力加減”の技術は、
将来の介護ロボットに直結する可能性が高い
そして同時に、
「全部ロボットに置き換わる」よりも、
「ロボットと人が役割分担していく」未来のほうが現実的
ということも見えてきます。
まとめ:ロボティクスの「いま」を知ることが、介護の未来を考える第一歩
卵を割らずに持てるロボットアーム。
夜中に自動で体位変換してくれるベッド。
寝たきりの人を、持ち上げずに車いすへ移乗できるロボット。
これらはすべて、「いつかできたらいいな」ではなく、
すでに存在している技術や製品です。
もちろん、課題もまだまだあります。
- 導入コスト
- メンテナンス
- 事故時の責任
- 家族や利用者の心理的抵抗
それでも、
「介護の中の“どこをロボットに任せられるか?」
「ロボットが肩代わりしてくれた分、人間に何ができるか?」
を考え始めるのに、今はちょうど良いタイミングだと思います。
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