施設に入ると、介護サービス費よりも保険外サービス「食費」「居住費(個室の部屋代など)」のほうが家計を圧迫しやすい。
ある施設のだが、居室代が約900円/日、食費が約2000円/日となる。これが31日となると、それなりの金額になってしまう。
そこを国がサポートする仕組み。
食費と居住費の軽減を受けるには、まず市役所で「負担限度額認定証」を取得する必要があります。
この認定証を持っている方だけが、特定入所者サービス費(いわゆる負担限度額制度)を利用できます。
認定の段階によって、食費と居住費の上限額が決まり、施設で支払う実費がその上限まで引き下がります。
目的
低所得者の食費・居住費負担を軽減し、施設利用のハードルを下げるため。
介護サービスの自己負担そのものではなく、生活費部分の負担を減らすのが目的。
特定入所者サービス費とは?
特定入所者サービス費とは、負担限度額認定証を持っている方に対し、食費と居住費の“超えた分”を保険から補填する仕組みです。
認定証が「入口」、特定入所者サービス費が「実際にお金が軽減される出口」。
仕組みとしてはとてもシンプルです。
認定証の段階に応じて、
・食費の上限
・居住費の上限
が決まり、その上限額を超えた部分を保険が負担します。
映画で例えると
「割引券を持っている人だけが割引料金で映画を見られる」という構造と同じ。
認定証が“スイッチ”で、特定入所者サービス費は“割引が発動する仕組み”です。
負担限度額認定とは?
施設利用時の食費・居住費を軽減するための“資格認定”です。
認定証が無いと、制度の対象に該当する方でも軽減は一切されません。
特養・老健・介護医療院・ショートステイは、介護サービス費とは別に食費と居住費の実費が必要になります。
この負担が重くなりすぎないように、所得の少ない方に軽減措置を用意しているのがこの制度です。
補足給付(ほそくきゅうふ)
特定入所者サービス費や負担限度認定を見ていると、『補足給付』という言葉が出てくる。
補足給付とは、特定入所者サービス費の正式名称のひとつ。
ここが一番ややこしいところだが、
“補足給付”というのは……
特定入所者サービス費の中身(実際のお金)そのもの。
つまり、
制度の名前:特定入所者サービス費
給付の名称:補足給付
という関係になっている。
行政文書ではよく 「補足給付(特定入所者サービス費)」 と並べて書かれている。
● 何を“補足”する?
食費・居住費のうち、
負担限度額を超えた部分。
● 対象は?
所得が低い=住民税非課税の方
※細かく段階は第1〜第3②
3つの違いを一言でまとめると
負担限度額認定(入口)
→ 軽減を受ける資格があるかどうか。認定証をもらう。
特定入所者サービス費(制度)
→ 食費・居住費の上限が決まる“仕組み”。
補足給付(実際の給付)
→ 上限を超えた分を保険が負担してくれる“お金そのもの”。
✔ さらに短く言うと…
・認定証=割引券
・特定入所者サービス費=割引制度
・補足給付=実際に割引される金額
と考えるとわかりやすいかもしれない。
対象となる方
基本は「本人または配偶者が住民税非課税」であること。
さらに年金額・所得・預貯金額で段階が決まります。
● 第1段階:生活保護 or 老齢福祉年金
● 第2段階:住民税非課税・年金80〜120万円
● 第3段階①:住民税非課税・年金120万円超
● 第3段階②:課税だが所得が低め+預貯金要件
● 第4段階(一般):軽減なし
※重要
子どもの収入や資産は判定に一切関係ありません。
家が立派でも関係ありません。
あくまで 本人と配偶者のみ が対象です。
軽減されるサービス
対象となるのは“施設系サービス”。
・特別養護老人ホーム
・介護老人保健施設(老健)
・介護医療院
・ショートステイ(短期入所)
在宅サービスは対象外です。
軽減の対象費用は、介護保険外の
① 食費(1日)
② 居住費(部屋代・1日)
の2つだけです。
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居室代・食費の負担限度額(1日)
段階が低いほど負担が少なくなります。
| 区分 | 食費(1日) | 多床室 | 従来型個室 | ユニット型個室 |
|---|---|---|---|---|
| 第4段階(補足給付なし) | 施設の実費 | 900円 | 1,500円 | 1,971円 |
| 第3段階② | 1400円 | 400円 | 800円 | 820円 |
| 第3段階① | 600円 | 400円 | 800円 | 820円 |
| 第2段階 | 390円 | 400円 | 500円 | 820円 |
| 第1段階 | 300円 | 0円 | 320円 | 820円 |
負担限度額=値引き後の“支払上限” と考えると理解しやすいです。
※上記の表は正確なものではなく、概算の金額です。
こちらも参考に→補足給付(低所得者の食費・居住費の負担軽減)の仕組み(令和6年8月~)より引用
軽減のイメージ
例①:ユニット型個室の食費
通常:食費2,000円/日
第2段階の方は…
利用者:390円/日のみ
差額:1,610円/日
例②:特養の従来個室代
通常:居室代1,500円/日
第2段階の方は…
利用者:420円/日のみ
差額1,080円/日軽減
差額は補足給付が負担し、月3万円以上軽減も珍しくないです。
申請方法
市役所の介護保険担当窓口で申請します。
≪必要書類の例≫
・本人と配偶者の収入がわかるもの
・預貯金の残高証明(通帳コピーなど)
・マイナンバー
・印鑑(自治体により不要)
申請後、審査を経て「負担限度額認定証」が交付されます。
有効期間は毎年7月31日まで。
途中で取得しても、翌年7月31日で一旦期限が切れます。
≪介護負担限度認定証≫

介護健康福祉のお役立ち通信
【最新】介護保険負担限度額認定証とは 居住費と食費を4段階で減額
よくある質問
● 申請したら誰でも安くなる?
→ 住民税非課税でないと対象外。
● 子どもの収入は関係ある?
→ 完全に無関係(本人・配偶者のみ)。
● 認定証を持っていれば自動で軽減される?
→ 認定証は資格。実際の軽減は特定入所者サービス費。
● ショートステイは先に軽減できる?
→ 認定証が出るまでは軽減不可。遡及なし。
まとめ
負担限度額認定は、
施設の食費・居住費を大幅に軽減するための制度 です。
・まず認定証を取得する
・対象は住民税非課税
・子どもの収入は関係なし
・特定入所者サービス費とセットで機能する
食費と部屋代は毎日発生するため、月単位では数万円以上の差が出ることも珍しくありません。
施設入所やショートステイを利用する可能性がある場合は、早めの申請が安心につながります。
一度、自分が対象かどうか相談してみる価値があります。
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